休日にBS放送をなんということもなくぼやっと見ていたら1985年に放送された物がアーカイブとして放映されていた。
東北大学の半導体研究所を率いて世界に光通信の研究を発信していた西澤潤一先生を追う番組だ。

西澤先生はあと一歩のところでノーベル賞を逃した日本を代表する科学者だがその指導は大変厳しく、毎週研究所で行われる若手の発表会は「西澤道場」として知られ恐れられていた。

誰もやらないことを研究し、誰よりも早く発表し、人の検証を受けなければならないものではいけないという実に厳しい研究姿勢であることが実際のカメラを通しての指導ぶりからもうかがわれた。

発表する若手は絶えず叱責の声がかかる部屋でしどろもどろになって答えていたのは気の毒だったが、先生は20代半ばで学会の定説に合わない発見をして発表するも世界の常識とは異なるとして長く不遇の時代を歩んだ苦い経験を持っている。それゆえの厳しさであったのだろう。

学会用の原稿は長く教授の机にしまいこまれ日の目を見ることもなくそのうち外国から同様の研究が発表され、何度も悔しい思いをしたという。

しかし八木アンテナで有名な八木秀次先生の目にとまったことから栄光の道を歩き始め、今ではアメリカ電子工業会に西澤メダルも作られるほど著名な科学者になっている。

小生は同じロータリークラブに在籍することから西澤先生と話す機会もありいろいろ伺ったが科学者はまじめにコツコツ研究をしていると一生のうちに二度くらいはノーベル賞級の研究に出会えるという。

自然科学は穴だらけなのだそうだ。

我々が糊口をしのいでいるインプラント治療も原理は解明され対処の仕方もわかってきたがそれでもまだまだ分からないことは多い。

治療は家を建てると同じ建築工学なのだが骨代謝という生物学的変数が入るため完全には予想がしずらい。

建築工学なら計算が入るはずだがインプラント治療に力学的計算は何もないのが不思議で、いまだにやってみたらうまくいった的な物が多いのも理科系出身の小生にはとても不満だ。

そのうち欠損状態と骨構造、咬合力、材料強度などをコンピューターで完璧にシミュレーションできて何の心配もなしに機械が正確に自動的に手術してくれる時代が来るのを夢見ている。

現在様々な臨床医が出しているデーターはメーカーのバイアスがかかったチャンピオンデーターが多くそうでないものは驚くほどデーターにばらつきがあるので信頼できるのは自分の臨床経験だけだ。

心臓外科や脳外科の名医の手術をテレビで見たが深い洞察力と確かな手さばきの両者が相まって難しい手術を成功させているのを見て、人間の脳はコンピューター以上だなと思わずにはいられなかった。

上の話と矛盾するようだが結局簡単な手術は機械で難しい手術は人間の手でということになって行くのであろうか。10年後の息子の時代にどう変化していっているのか楽しみだ。

今のところNHKのアーカイブに記録として残るインプラント治療がないのが残念なことではある。