母ががんでその短い人生を終えて25年になるが、亡くなる前に何やら日記帳に短歌やら俳句のようなものをたくさん書きとめていたのを思い出す。

62歳と言う今考えれば大変に短い一生であったが、最後に自分の残り時間が短いのを知り気の向くままにノートにそのような物を記して気を紛らわせていたのであろう。

また亡くなった後、明け方のNHKのテレビで江守透さんの朗読する様々な唐の詩は心に深くしみて悲しみに沈む人の心を救うのは詩だな・・・と思わずにはいられなかった覚えがある。

小生は高校生のころから漢詩が好きで吉川幸次郎先生が監修していた岩波の”唐詩選”は大の愛読書だった。

受験勉強には全く関係がないが、韻を踏んだ唐時代の美しい詩は本当に殺伐とした心を休めるものだった。

昨日昼飯を食ったあと入った本屋でたまたま目に留まったのが岩波文庫の杜牧詩選という小冊子。

杜牧は最も好きな詩人であったので迷わず買い求め診療の合間に読みこんでいる。

江南春絶句(こうなんのはる ぜっく)は最も有名な詩で色彩感にあふれた見事な詩だ。

千 里 鶯 啼 緑 映 紅        千里 鶯啼いて 緑 紅に映ず
(せんりうぐいすないて みどり くれないにえいず)

水 村 山 郭 酒 旗 風        水村 山郭 酒旗の風
(すいそんさんかくしゅきのかぜ)

南 朝 四 百 八 十 寺        南朝 四百 八十 寺
(なんちょう しひゃく はっしんじ)

多 少 樓 臺 煙 雨 中        多少の樓臺 煙雨の中
(たしょうのろうだい えんうのうち)

この美しい詩を高校の漢文の時間に習ったような記憶をお持ちの方も多いと思う。

詩と言うものは古来、支那では声に出して詠ずるものだったから、江守透の美声で朗読されるこの詩は当時の人々にも深い感動を与えたに違いないと勝手に解釈している。

医師や歯科医師は人の心を扱う商売だから、詩のひとつもひねり出さなければ学校を卒業させない!

くらいにカリキュラムを変更していただきたいですな(笑)。