歯科治療には”欠損補綴”と呼ばれる分野があります。

これは歯が無くなった(欠損した)ところに義歯やインプラントやブリッジを入れる治療を言います。
この中で入れ歯は平安時代の尼さんに入れたものが現存しているくらい古い療法ですが、もっとも新しいと思われているインプラントは実はすでに古代マヤ文明時代に貝殻や宝石を自分の歯が抜けた部分に入れたものが出土しています。

しかもしっかりくっついて。

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ハーバード大学に保存されている古代マヤ人のインプラント。
下顎前歯部に3本の貝殻のインプラントが入っている。

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日本最古の義歯は室町時代の仏姫という尼さんが入れた入れ歯。
柘植を削りだして作ったもの。

学生時代に一番苦労させられたのはこの補綴の実習で意地の悪いインストラクターが多かった。

散々いじめられてノイローゼになり卒業が一年遅れていまだに頭がおかしい同級生もいます。
その実習はワックスや石膏で歯の彫刻をしたり、入れ歯の作り方をさせられたりととにかく大変でした。
卒業すれば上手な技工士さんにすべて任せるのにくだらないなあ~と思いつつも、臨床実習の最終学年では担当した患者さんのブリッジや義歯はすべて責任を持って自分が作らねばなりません。

製作に手間取り午前様になることもありましたが、暑い夏の夜に窓を全開にして蚊に食われながら入れ歯を作ったのは大変な思い出です。

さて今を去ること30数年前の時代では欠損補綴のためには健康な歯をガンガン削るのは罪なことだとはだれ一人思ってもいませんでした。特に大学では。

むしろいかに精密に歯を削り義歯やブリッジを作るかが大命題で、ある意味今でもそれは脈々と教育に残っているのが恐ろしいことです。
力学的には上下のかみ合わせは骨と骨との関係が正しいので歯と歯、インプラントとインプラントという図式が成り立ちます。

歯肉に乗っかっているだけの入れ歯と天然歯とでは力の負担が全然違い入れ歯の下の骨はかみ合わせの力に負けてどんどん吸収していくのです。

レントゲンで見ると恐ろしいほど入れ歯の側が吸収しているのがわかります。

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こちらは有名なアイヒナーの咬合分類を表した図。
臼歯部4組の咬合がなければかみ合わせは徐々に崩壊していくことを示した図。脚が4本あってはじめてテーブル(咬合)は安定し、上の花瓶は倒れない。

中村社綱先生のセミナーでは以前からこの力学的考察を基にした教育がしっかりしています。

歯を無くしても残った歯をきちんと保ちながらいかにあごの骨の吸収を防いでいくか、ここを様々な演習を通して皆さんに伝えています。
わたしも中村イズムの継承者として若い会員たちに伝え続けるつもりです。

歯は削らずに残しましょう。

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小生の愛読書ノーベル物理学賞受賞者ファインマンの書いた”ファインマンの物理学”
開業後しばらくして大学近くの古本屋で購入しそのわかりやすさに驚嘆した。歯科医学に最も欠けているもの”物理学”の思考
を養うには最適の書として若い人に大推薦。