先週土曜日の演奏会を最後に仙台フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を12年にわたり務めたフランス人のパスカルヴェロさんがこの地を去りました。最後の演奏はアメリカ特集で、バーバーの悪口学校に始まりコリリアーノのクラリネットコンチェルトにコープランドのビリー・ザ・キッドそして最後におなじみのバーンスタインのウェストサイド物語でした。すべてアメリカものにしたのはすべての作曲家がお互いに関連しあっているからで、その関連性をヴェロさんはコンサートの最初に詳しく解説してくれましたのでよくわかりました。二曲目に演奏されたコリリアーノは現代音楽の作曲家で演奏するのが凄く難しい。スコアを見たときに流石のヴェロさんもなんだこりゃ!と絶句したそうです。これは翌日二人でランチをした際に直接彼から聞きました。仙台フィルのクラリネット奏者がまた天才で、ポーランドから来た逸材です。8か月前にやることを知らされてすぐに練習に入り、二回目のリハーサルでは既に完璧で譜面を全く見ずに複雑な現代音楽のスコアーを暗譜していたというから驚きです。昔ニューヨークフィルの音楽監督だったギリシャ人のミトロプーロスは、どんなに複雑な現代音楽のスコアーも一度見ただけですべて暗譜してしまったという並はずれた頭脳の持ち主でしたが、仙フィルの奏者も同じような頭脳の持ち主です。ヴェロさんも本当に彼は凄いと舌を巻いていました。

三曲目のオペラ・ビリーザキッドは中の旋律に聞き覚えのあるメロディーが入っています。高校生のころに東映パラスで見た映画「シェーン」の中で農民が躍るフォークソング”グッバイ オールド フレンド アイム リービング シャイアン”と言う曲です。コープランドはだれにもわかりやすいようにカウボーイが歌っていた旋律を入れたのですね。面白い発見でした。最後のウェストサイドストーリーはレナードバーンスタインの代表曲ですが、前日の金曜日にはちょっとした失敗があったけど翌日私が聞いた時は完ぺきだったそうです。コンサートで同じ曲をやる際は二日目が良いようですね。アンコールが二曲ありましたが、最初のコリリアーノの時はクラリネットが石川さゆりの”津軽海峡冬景色”をやって会場をあっ!と言わせました。そしてその演奏がまたすごい!これはヴェロさんも当日まで知らなかったそうです。そしてウェストサイドの後は楽団員がハロウィンパーティーのように帽子をかぶって楽しく演奏してくれました。フランス人の指揮者のヴェロさんと翌日二人でランチをした時に聞いた話では、彼はバーンスタインの特別レッスンをニューヨークで2週間受けたそうです。どうでしたかと聞いたらとにかくバーンスタインはスターでカリスマだったそうです。

仙台フィルから色彩豊かな音を紡ぎだすことに成功したマエストロとはこれでお別れです。お別れに仙台四郎の置物を上げました。幸せを呼ぶものだから東南の方向に飾ってくださいと言ったらとても喜んでいました。

来年からの新しい指揮者はワグナーをはじめとするドイツものを得意とする日本人指揮者です。もうあのしなやかな音は聞けないかもしれませんね。

明るく愉快なパスカルはソルボンヌ大学卒業後パリ高等音楽院を出た秀才です。

日本でいえば東大を出た後で芸大に入ったようなものですから凄い。

ドイツ語・英語・イタリア語に日本語もだいぶ話します。演歌の言葉も理解しているのには驚きです。

ユーモアのある楽しい人でした。お元気で。